中国の伝統的な外交手法に、
有能な外交官には交渉をぶち壊して手ぶらで帰し、
無能な外交官には手厚くもてなし手柄をたてさせる、
というのがある。
有能な外交官は手柄をたてられずにご主人様から嫌われて、権力を失う。
無能な外交官に手柄をたてさせればバカが出世して権力を持つ様になり、その組織は弱体化する、という寸法だ。
キングダムでお馴染みの廉頗将軍はこの計略を食らって閑職に追いやられているし、李牧将軍も同じくこの計略にハメられて王様に自害させられる事になる。「あの李牧」も、あっけない死に方なのである。
要するに、陥れたい奴に、意図的に間違ったフィードバックを与えて、間違った学習をさせる、というやり口だ。
日本にも典型例がある。
『方広寺鐘銘事件』と言って、大坂の陣が始まるきっかけになった歴史事件だ。
徳川家康は、方広寺の鐘の文字が気に入らない、攻め込んで潰しちゃっても良いですか、と豊臣家を脅す。
これに慌てて弁解に来たのが、片桐且元である。この人は賤ヶ岳七本槍の一人にも数えられ、元亀天正の戦国を知る武者であるから、物事を現実的に見る事ができる人だ。
有能である。(※ドラマではいつも馬鹿っぽく描かれるのだが)
豊臣家の首脳部は、片桐に任せてじっとしていれば良いのに、あろうことか大蔵卿局(おおくらきょうつぼね)という何も分かってないババアを別口で使者にやった。
使者を二つに分けると言うのは実に間抜けな事である。
家康は、側近の南光坊天海だとか金地院崇伝だとか、悪知恵を練らせれば日本で三本指に間違いなく入る悪坊主に相談して、「これは、あの計略が使えるな」と策を練り、中国の兵書どおりに二人の使者をもてなした。
片桐且元には「秀頼と淀殿を人質に差し出さぬ限り絶対に許さん!」と無理難題を押し付けて叩き帰し、
一方の大蔵卿局には「方広寺の鐘?えーっ、そんなのぜんぜん怒ってないですよぅ笑」と、手厚くお土産を持たせて帰した。
豊臣家のリーダーは淀君なのであるが、二人の使者から全く正反対の報告を受けて、コロリとやられる。
有能な片桐を降格させ、無能の大蔵卿局の一派(大野治長とか)を引き上げた。
これは家康の謀略だ!と、見破る事など全く出来ない。
幼い頃から苦労続きで百戦錬磨の家康からすれば、淀殿や秀頼など赤子の様なものだ。
豊臣家の弱点は、開祖の秀吉と言う人が本物の天才だったため、子弟教育をしない。勉強や読書を軽んずる風潮があった。
中国の史書を読めば、廉頗将軍の事や李牧将軍の例が書いてある。三国志にも、離間の計なんぞは山ほど類例がある。
片桐且元と大蔵卿局のケースも、兵書マニアならば簡単に見破れたであろうし、豊臣家にもそう言う人材は居たはずである。
さて、長々と『離間計』について述べて来たが、主旨は『フレンドシップ戦略』である。
非モテ男の恋愛戦略は、「目当ての女の子と友達になろうとする」であり、それ以外の方法を知らない。
実際に女の子は、自分とセックスしようとしない限りにおいて、非モテに優しくする。あたかも家康が大蔵卿局を甘やかした様に、優しいのである。
しかし女は、非モテ男の態度が変化し、自分を性的な目で見ていると知ると、鬼の様に厳しくなる。まるで家康が片桐且元を激詰めして追い返したかの様にね。
女の子の優しさは、非モテを地獄へ導いてゆく。
非モテは間違った学習を繰り返す。
デブでも良い。不潔でも良い。外見に無頓着で良い。オナ猿でも良い。だって目の前にいる女の子は優しいじゃないか、と。
調子に乗った非モテは、キモいセクハラ発言と下ネタを連発する様になる。これが友達作戦の最終駅だ。男の最底辺である。
女たちはこの非モテの事が気持ち悪過ぎて笑止なのだが、ニコニコしている。
もし仮に、調子こいた非モテが手とか触ろうとすると、女は恐怖に引きつった顔で大絶叫する。これが本音である。触んじゃねえよと。
偽りの優しさとはきっぱり訣別して、正しいフィードバックを受けるべきだ。
連絡先聞いて、初手からさっそく「二人で食事でも」と誘う。性的な意図はあえて隠さない。
連絡先聞く時、ご飯の誘いをする時、部屋に連れ込もうとする時、非モテ男は女の子から、恋愛のあらゆる場面でボロクソに反撃を受けるが、それが正しいフィードバックである。
自分の力不足を認め、地道に改善してゆく他無い。
手痛い失敗のみが、あなたを成功(性交)に導いてくれるのである。
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