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【情けない男の話】家族が事故に遭った。さて、裁判はどうする。

これは僕の知人の親類の話である。

舞台は日本のとある田舎。雪がたくさん降る地方だ。

いかにも日本人的で、腑抜けで、情けない話であるが、心の問題について格好の例となるので紹介したい。

その人は、壮齢の男性で、親も健在、子も幼いという、一家の大黒柱の立場である。情けない男(仮名)、としよう。

ある日のこと、情けない男の母が交通事故に遭った。

30m跳ね飛ばされて、即死であったとか。

現場検証をすると衝突前にブレーキを踏んだ形跡はなく、運転者の居眠り運転であった事がわかった。

この運転者は任意保険に入っておらず、自賠責のみ。賠償能力は、無い。若い男性であった。

しかし、母を殺されたのだ。一大事である。

今1000万円を貰うか、それとも10年に分けて毎年100万円ずつ貰うか。

 

加害者の解決金の提示額は5万

加害者の男性はどうしたか?と言うと、『街の顔役』とか言う人に仲裁を申し出たのであった。

ここらへんが実に田舎である。

その顔役が言うには、

「先の短い老婆と、未来ある青年を比べてみてくれ。この青年の将来を潰さないでやってくれ」

とのことで、事故自体をなかった事にする方向でお願いしたい、と。

解決金の提示額は5万であった。自賠責すら使わないつもりらしい。事故の存在を消すつもりだから。

被害者の親族はおおいに怒った。

あまりにも舐め腐った話である。

保険に入ってない奴が悪いだろう。

そもそも居眠り運転かどうかも怪しい。衝突してしばらくブレーキを踏んでいないのは、ひき逃げをするつもりだったのではないのか、と。

情けない男は、裁判がどんなものかイメージがつかない

情けない男も、気の弱い奴ではあったが、親族が怒っているのでなんとなく同調してその場は怒るそぶりをみせたと言う。

「百回謝ってもらっても仕方がない。裁判をすれば、しかるべき賠償金も取れるし、殺人の罪を償わせないといけない。お母さんの仇討ちをしよう!」

親族の中の血気の者が、こう言った。情けない男の兄弟である。母を殺されたのは同じだ。東京で働いている人だった。

怒ってはみたものの、情けない男は裁判がどんなものか、とんとイメージがつかなかった。

どう言う手続きで進めれば良いか、そもそも裁判とは何なのか、分からないのだ。

 

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知らない事を調べる経験が、人生においてまるで無い

家長というチンケなプライドだけはあって、分からないと言うのが恥ずかしい。

知らない事を調べると言う経験も能力も、彼の人生においてまるで無い。

親族会議では「裁判あるのみ!」と決まり、情けない男もその場の勢いで「裁判にしよう」と同意したが、いっこうに物事は進まない。

当然である。漢字が読めなくて、法律用語がちんぷんかんぷんだからだ。

そしてもはや、裁判って何?実は分からないんだ、とは言えない。

八方ふさがりのまま、現実逃避して、時は過ぎる。

続く。震えて待て。

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次回:【情けない男の話 その2】怖気にやられて、何もできなくなる人の"自己正当化"

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