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前回:木下藤吉郎の話 その1

信長様の草履取り生活は、藤吉郎にとって幸せなものであった。

ある時はいきなり顔に小便かけられたり、またある時は草履を懐で温めていたのを、「キサマ!俺の草履を尻に敷いたな!」とキレられて、馬用の鞭で顔面を思い切り殴られたりと、ハードな日々ではあった。

美男子信長のコンプレックス

しかし、藤吉郎が幸せだったのは、神々しいまでに美男子な信長様を間近で見られる事であった。
土饅頭のごとき藤吉郎は、信長様が、自分と同じ人間とはまるで思えないのだ。
神様を拝むような気持ちで、信長様を崇拝するようになるのである。

余談だが、信長の父・信秀の血統は奇跡的に美男美女を量産している。
長い手足、小さな顔、涼やかな目元、白い肌。
織田家の血筋の特徴である。

頭脳の鋭い藤吉郎は、スーパー美男子の信長様が、とあるコンプレックスを持っている事に気がついた。

それは声だ。
美しい顔立ちからは考えられないような、素っ頓狂に甲高い声を出すのだ。

信長様は自分の声をむちゃくちゃ嫌っておられる。
言わないけど。
だからいつも言葉が短い。

多くを喋らせるやつが、大嫌いなのだ。
一を聞いて十を知らなければならない。

事業にも力を入れる信長

信長様は、朝から晩まで暇があったら戦争に出かけ、本当によく働く。
戦争だけでなく、算盤勘定も立派で、特に貿易に力を入れている。

普通の戦国大名は商人を卑しんで、事業をやったりはしない。
おかげで領内の税金は驚くほど安い。
うつけ殿と陰口を言う領民は、今やほとんど居ない。

人事も合理主義だ。
先日など、滝川某とか言う怪しい伊賀忍者が、今流行りの鉄砲術が得意だと言って、侍大将になった。
身分や出自を問わず、有能であればどんどん出世できる。

この勢いなら、先代の信秀公ですら出来なかった尾張統一が、本当に現実になるかもしれない。頑張らねば。

藤吉郎は未来が明るく輝いているように感じた。

 

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暖房費の高騰。藤吉郎を抜擢。

そんなある時、薪奉行騒動が起こる。

清州城で、高騰する薪炭費(暖房費)を見つけた信長様が、大激怒を発したのだ。

呼び出された薪奉行は「先代からの前例ですので仕方ありません」と、悪びれもなく言ったので、大変なことになった。信長様は領民には優しいが、禄を食わせてる家臣が役に立たないと、激怒の勢いで斬り殺す癖がある。

無能な薪奉行は真っ青になった。
やばい、死ぬかも。そして、必死の改善策を申し出た。

「質素倹約で行きます!」と言う。
城内の薪を、人の居ない部屋でも燃やしっぱなしにしている事が問題なので、こまめに火を消す事により、薪炭費節約をやります、と。
(現代で言うこまめに電気消す、エアコン消す。無能人がよくやる。新入社員のみんなは覚えておこう!)

薪奉行の首は繋がったが、薪炭費は一向に安くならない。

信長様は、再びこの薪奉行を呼び出して報告させるが、薪奉行は建前ばかりで、何を喋ってるか全く分からない。
いね!と信長様は短く叫んだ。
もういいや、お前は薪奉行辞めろ、という意味だ。

かくして藤吉郎が、新しい薪奉行になった。
大抜擢である。小便の約束は果たされた。

「わたくしが、薪炭費を半額にしてみせましょう!」

ここで藤吉郎は信長様に大見得を切った。
「わたくしが、薪炭費を半額にしてみせましょう!」と。

死ぬか!と信長様は叫んだ。
それ、出来なかったら死んでね、という意味だ。
なんとも人の命の軽い時代である。

藤吉郎には計算があった。そもそも薪なんか山に行けば幾らでも落ちてるんだから、こんなものに金を払う事がおかしいんだ、と。
下層民ならではの発想である。
それに、信長様は、戦争にも商売にも役に立たない暖房費のような経費が大嫌いで、本音では城内の女どもが凍えても構わんとすら思ってるはず。
だから最低限の薪でいいだろうな、と。

藤吉郎は、自分の足で、薪の流通経路を遡っていった。

 

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自分の足で、薪の流通経路を遡っていく

あるわあるわ、おびただしい中間業者の数々であった。
しかも、どうやら薪奉行は袖の下まで貰ってたらしい。
こりゃあ金かかるわ、と。

ついに生産地まで辿り着いた。やっぱり思った通り、生産地の里山には、薪が幾らでも落ちてる。
枯れ木を切り倒してもいい。
村人たちは、拾った薪を二束三文で地元の業者に持ち込んでる。

「これさ、地元の業者に持ち込まずに、村で当番作って城に直接運んでくれん?もちろん運賃は出すから。あと古い木を1本切り倒して薪にしてくれたら、新しい木の苗木を5本あげる」

村人は苗木が貰えると言う事に喜んで、マネー成立。
この頃、長引く戦乱の世で、森林伐採が凄まじい事になっていたから、苗木はいい取引材料だった。

 

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薪炭費が半額以下になる

かくして、本当に薪炭費は半額以下になった。

この報告を聞き、信長様は藤吉郎のことを大変に褒めたと言う。
つーかこれ、世の新入社員の参考になるんかいな?

更に時は流れ、清州城を台風が襲った。

尾張国は低湿地で、雨が降るとすぐ水浸しになる。
後の水攻めの構想も、洪水が頻繁に起こる尾張で暮らすからこそ得られるアイディアであるが、それはまあいい。

水が引いた時、清州城の塀が壊れていたのである。

時は戦国、塀が壊れていて誰かが攻めてきたら防ぎようが無い。

急いで塀の修理をしなければならないのに、職人がストライキからのサボタージュ中であるという。

信長様は激怒して、普請奉行を呼びつけた。

その3に続く!震えて待て!

 

参考:

採用面接必勝之法【就職・転職の面接で受かる方法】大切なのは"自己犠牲の精神"

【楽な仕事の見つけ方】どんな会社・業界を選んだらいいか。

映画レビュー【沈黙~サイレンス~】辛くて孤独な、勤め人時代を彷彿とさせる映画であった。

 

次回:秀吉に学ぶ【勤め人(部下)の姿勢】間違いなく日本史上最強の新入社員だった男の話 木下藤吉郎 その3


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