女に肯定してもらいたくない男は居ないし、女にモテたくないと言う男も居ない。
ゆえに、男が採用するあらゆるアクションは、基本的に女にモテる為に行うものなのだが、
「こうすればモテるであろう」
という、イメージの仕方が男によっては千差万別なのである。
モテ男が、「こうすればモテるであろう」と予測して実行するアクションは、女が好感を覚えるものであるが、一方で、
非モテが、「こうすればモテるであろう」と予想してする振る舞いは、ことごとく女を白けさせ、気持ち悪がらせるのである。
今日の題材は『喫煙』である。
いきなり核心に迫るのだが、男は、女にモテるためにタバコを吸う。
これはマジだ。
毒物の摂取およびそのアピールは、人間オスの原始本能にしっかり刻み込まれたセックスアピールの一様式なのである。
ハンデキャップ理論というのがある。
これはクジャクが例にされる事が多い。
きらびやかなクジャクの羽根は、めちゃくちゃ目立つ。
ジャガーやイタチやミミズクなど、クジャクの美肉を狙う肉食獣はわんさかと居る訳だが、あれだけゴージャスな羽根を発達させたら、当然見つかって襲われる可能性は高くなる。
「派手なカッコしてるけど、俺は生き延びてるぜ?」
と言うアピールなのである。
オスによっては羽根が冴えない奴も居る。栄養不足や遺伝的な問題が考えられるだろう。このオスは、ぜんぜんメスにモテず、セックス出来ないと言う。
一方で絢爛な羽根を発達させたオスも居る。このオスはメスにモテる。セックスもできる。
豪華な羽根は、エサを確保するための縄張りをしっかり守れている証拠だし、成長途中で病気にもやられてない証拠だし、何よりもあんなド派手な飾りを担いで生活していて肉食獣に食われていないのは生き延びる力が優秀だ、と遺伝子の良きことを雄弁にアピールするものである。
メスとしても間抜けなオスとセックスして、間抜けな子を産んでも、簡単に肉食獣に食われてしまったら徒労に終わるので、なるべく生きる力の強いオスと子を残そうとする。
クジャクが人間に変わってもメスの行動原理は全く同じ、普遍の真理である。
羽根の美しいオスは生きる力が強い、だから交配の相手としてふさわしい、そう言う理屈。
人間の場合も色々なハンデキャップ行動はあるが、そのうちの一つとして、毒の摂取がある。
「俺はこんなに身体に悪いものを摂っているのに、どうだ美しい男だろう?」
と言うアピールである。
タバコを始めとした毒物摂取とそれを見せびらかす行動は、原始の頃から根強く見られたものらしいですな。
確かに、大昔にはこれは合理性があった。
10台で生殖して20台で子育てして30台でそろそろ死ぬ、みたいなライフサイクルの頃は、10台でバカバカ毒吸って女にアピールして、で、良かった訳だ。
人間の寿命が短い時代の生殖戦略は、
「瞬間最大風速でモテれば、後はどうだっていい」
と言うワンチャンセックス作戦がけっこう有効に機能したからである。
ところが、現代において『喫煙でセックスアピール』は間違ったフレームである。
何故かと言うと、高度に発達した資本主義世界においては、10台は勉強して、20台は仕事して、30台でやっと生殖、というライフサイクルに変遷して来ているからである。
10台で毒物を摂取してると、老ける。それを続けて30台にもなると、臭いオッサンになる。
30台をモテ期に照準合わせするならば、30台でも石鹸の香りのする年齢不詳の男、と言うのが適したプランとなるはずだ。若い頃からなるべく身体を傷めない方がいい。
仮に、毒物アピール作戦が奏功して、10台でモテて生殖できてしまったら、今度は子育てに追われる事になる。知識や資本の蓄積すべき時期に、それが出来ない。
資本主義世界の恐い所は、知識や資本の蓄積が無いと労働力単価の安い下働きしか出来なくて、貧困層に落ちてしまいやすい事だ。
その子もまた貧困になる確率が高くなる。貧困の連鎖である。
したがって、10台に『モテ期』を設けても、現代資本主義では有効な作戦にはならぬと考えられるのである。
毒物摂取のハンデキャップアピールは、人間オスにとって、数万年の伝統を誇る由緒正しき『モテテク』である。
今を生きる若者が、タバコ吸えばモテるだろう、と、漠然と想像して喫煙するのも仕方ない事だ。全ての男はモテたいのだから。
だが、今の時代、それは間違ったフレームなのである。
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