今の若い人たちには信じられないかもしれないが、日本には高度経済成長期ってものがあった。
まあ実感的に言うなら、「頑張れば報われる時代」ってやつだ。
勤め人の仕事を、頑張れば頑張るだけ、給料も上がるし、女もついてくる。
そりゃ頑張るだろうよ。
いい大学も目指すだろうよ。
学歴社会だとか、勤め人の新築マイホームだとかは、この頃に生まれた慣習である。
今回は、そんな今の日本のちょっとした成り立ちをお話しする。
【社員日記も更新中】
目次
戦後食糧難に困った日本が、一躍先進国に躍り出た
先の大戦に敗けて戦後と呼ばれた時代、日本では食糧難が続いた。
狭い国土に激増する人口をとても食わせられないから、朝鮮や満蒙に進出したという事情があったのだが、その人たちも引き上げて帰って来る。
いよいよ人口はパンパンになった。食糧増産は喫緊の課題だったし、まごうかたなき正義となった。
ここに欧米式の超高効率の農業が導入された。
高度に機械化・自動化された農業である。
農業人口一人当たりの生産量が飛躍したのである。
食糧難は解決したが、日本は自国生産にとどまらず、大量に食料を輸入し始めた。
食うに困らないどころか、国じゅうに食料が溢れた。
脇道の事であるが、日本国は車や家電などの工業製品を輸出して食っていくビジネスモデルを選択した。
数々の僥倖に恵まれ、この路線は大当たりした。
日本は一躍先進国に躍り出たのである。
農業では食えないから、東京に行こう。
ところで、戦前までの日本の主たる産業は農業であった。
戦後、農業には革命的なイノベーションが起こり、生産性が飛躍的に向上して、農作物あたりの単価は急落することになる。
農業人口一人あたりの生産性が飛躍的に向上したうえ、輸入食料も溢れると、どうなるか?
生産性の向上とは、労働単価、商品単価下落と同意である。
もっと簡単に言うと、農村では食えないという事になる。
効率的になり過ぎた農業と言う仕事には、付加価値が出ない。
農村の労働単価は雀の涙なのだし、機械化と分業化によって一人がこなせる作業量も格段に増え、農業従事者はほとんど不要になった。
「こんなド田舎にいても食えない!」
「オラ、東京さ行くだ!」
と言うことになる。
⇒質問【給料とストレスの関係】収入が良い企業は、どこもストレスが大きいのか
「東京に出て、都会で仕事をし、家庭を築く」と言う物語
溢れた農業人口は、都市に向かう。
故郷の田舎から都市を目指す流れは決定的となった。
身体ひとつで都市部に出て、製造業に就職するもよし。
勉強が得意なら東京の大学に行き東京を見聞して東京で仕事を探すもよし。
かくして、「東京に出て、都会で仕事をし、家庭を築く」
と言う物語が生まれた。
この物語は、国家の進む方向にも合うし、資本家の利害にも一致する。
ますます強化されてゆく事となった。
高度経済成長期と呼ばれる時代。
会社での出世が報われる時代
田舎から東京に出て働く人々は、ある事に気付く。
この日本という国は、めちゃくちゃ学歴社会じゃねえか、と。
高卒で働く人は、入社時点の給料も低く、役職の昇進も遅いうえ、その昇進もわりとすぐ頭打ちになる。
ところが大卒の後輩は、入社時から給料は優遇され、仕事ができない割りにスイスイ出世し、簡単に自分を追い越していく。
悔しいに違いない。愛社精神や職務の貢献では大卒の後輩に劣ってはいないのに、彼は次々に大きな仕事を任せられ、手柄を立てさせてもらい、出世の階段を上ってゆく。
こんな光景がそこかしこにあったと言う。
「まずは大学に入らないとスタート地点にも立てない」
と思ったはずだ。
「出来るならば、なるべくいい大学に行くべきだ」
と、なる。
終身雇用と年功序列が全盛の時代である。島耕作の時代だ。
会社組織の中で出世することで、けっこう報われた時代だったのである。
国庫も豊かで、医療費も年金も余りまくっていた。
明日は必ず今日よりも豊かになる。
それが信じられた時代だ。
何をやってもうまくいく時代だった
いい大学に行って、いい会社に入って、マイホーム買って、年金貰って引退。
そう言う物語が強い説得力を持っていたのである。
お金があるなら貯金しておけば7%からの金利が付く。
株を買えばどの銘柄もガンガン上がる。
思い切ってローン組んで600万円で郊外に土地付き戸建てのマイホームを買ったら、これもぐんぐん地価が上昇し、10年後には7000万円だ8000万円だとかの値が付く。
何をやっても上手く行く時代だった。
どうにもならないのは自分の学歴だけ。
この物語はけっこう続いた。
をはり。
【ゆるふわ関連コーナー】